血の池地獄や針地獄など、誰もが一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。「地獄」ほど、人間誰しもが持つサディズムと創造力が発揮されているものはなく、日本人と仏教との最初の接点も、「ウソをつくとえんま様に舌を抜かれるよ」など、「地獄」の概念から始まります。日本文化の「土台」である仏教への興味も、その第一歩は地獄を知ることから始まるのです。
キリスト教でもイスラム教でも、「天国」は実に凡庸です。キリスト教では天国は、「神がおわす青い空と緑の大地のもと、食べる心配がなく、住民すべてがイエスの教えに従って暮らす場所」だそうで、イスラム教では、「枯れることのない泉があって、緑の木々が涼しげな影を落としている場所」だそうです。
こんな天国に対し、地獄はバラエティに富んでいます。地獄のほうがイマジネーションを刺激されるのは世の東西を問わないようで、古今東西、さまざまな作家や画家が「地獄」を描いてします。本誌で紹介する血の池地獄や針地獄などは、「なるほどなあ!」って感じですし、フランドルの画家ヒエロニムス・ボッシュの三部作「快楽の園」では天国と地獄が描かれますが、じっくりと鑑賞したくなるのは、地獄のパート。修道女の格好をした豚にキスされる男(たぶん姦淫の罪を犯した人)、虫に頭から喰われる人など、見ていて実におもしろい。「この人、いったいどんな罪を犯したのかしらん?」と考えたくなる、すなわち楽しめるのは、圧倒的に地獄のほうです。
そこで本書では、地獄の日本版ともいえる往生要集をもとに、「地獄」の様子とその責め苦、どんな人がそこに落ちるのかを中心にいとうみつる氏のポップなイラストで描きながら、西洋やイスラムの地獄も解説。最終的には、地獄の恐怖からの脱却を謳った浄土宗や浄土真宗、時宗の誕生までを解説します。
Amazonで購入
キャラ絵で学ぶ! 地獄図鑑 (日本語) 単行本 – 2020/8/25