出版エージェントは著者と出版社をつなぐのが仕事です。具体的には、テーマに相応しい出版社を選定する、そこに向けて企画を仕上げて提案する。出版が決まれば著者が執筆に専念できるよう煩雑な事務手続きを代行したり、条件面などの交渉も行います。
著者が1冊の本を出版するには、多くの関係者との連携が必要になります。版元編集者、営業担当者、編集実務担当者、ライター、デザイナー、イラストレーター、校閲者、プロデューサーなどなど。彼らは何十冊、何百冊と本作りを経験している出版のプロです。そんな中で著者だけが出版素人というのが現実です。
ビジネス書で専業作家というのは、ほんの僅かで、ほとんどの著者は本業があって、またその本業で成功しているが為に例外なく忙しい。そんな中で「出版のプロであり、企業である出版社」と「出版の素人で一個人」の著者が対等にビジネス交渉していくのは現実的ではありません。そこで、出版社なり編集担当者を「全面的に信頼する」という構図ができあがります。
もちろん多くの出版社は信頼すべき存在であり、版元編集者は著者とパートナーシップを築いて「売れる本」をつくるために全力を傾けます。ただ、情報弱者である著者との関係においては有利な存在であることに変りはありません。そもそもビジネス書著者には、複数の出版社の話を聞いて条件面を比べて出版先を選ぶ──という他の業界では当たり前のことがなかなか出来ない現実があります。
2020年に出版された宮崎伸治さんの『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記(三五館シンシャ)』が話題です。この本では出版業界のダメな部分、構造的な欠陥がイヤというほど出てきます。ちょっと極端にも感じますが、どのエピソードも出版関係者には「あるある」で、読むと憂鬱な気分になります。出版希望者もこの本を読んだら本を出すのを躊躇するのではないでしょうか。
そんな状況を打破するのが、多くの出版社とパイプをもち、出版の専門家である出版エージェントです。テーマによりマッチした出版社を選択肢に加える、出版スケジュールを調整する、執筆が困難になった場合にブックライターを入れる、販促を提案するなどなど著者側に立って出版に有利な環境を整えます。
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